PFUから発売されているHHKB Studioは、同社のHHKBシリーズ初となるポインティングデバイスを搭載しGUI操作が主流となった時代のマウス操作もホームポジションから手を動かさずに入力できるような製品へと進化した。
つまるところHHKBのアイデンティティである配列に、某ThinkPadの某トラックポイント的なエッセンスを加えた製品がHHKB Studioであるわけです。加えて公式がキートップ(PFUはキーキャップのことをキートップと呼称している)の3Dモデルを公開してキーマップのソフト的なカスタマイズに加えてハード的なカスタマイズも勧めていて、 過去にはマウスボタンをカスタムするキーキャップを作ったりしていました。
カスタムマウスキーキャップ | ほぼ週刊キーボードニュース 公式ショップ https://keyboardnews.booth.pm/items/5468560
(これは今回紹介するものとは違うので注意)
もうちょっとストロークを短くしてみたい
HHKB Studioのメインのキー(HHKB配列のところ)はCherry MX系のPFUオリジナルのキースイッチですが、3つあるマウスボタンはGateron Low ProfileのBrown(たぶんKS-27)を使用しています。これのストロークは1.5mmとなっていて、某ThinkPadの3ボタンと比べると結構長い設定になっています。
(構造が見えやすいように試しに作ったクリアバージョン)
そこで一般的なマウスで使用されているマイクロスイッチに置き換えるModを作って、さらなるストロークを短くする改造をしてみました。今回のModで得られたストロークは驚異の0.2mmです。
ウルトラロープロマウスボタン
マウスボタンのGateron Low Profileキースイッチは、メインのキーと同様にホットスワップソケットで本体の分解をせずとも交換可能な構造になっています。そのため既存のキースイッチの代わりにマイクロスイッチが刺さるようにするだけで本体は無改造で置き換えができます。
当たり前ですがGateron Low Profileとマイクロスイッチは形状が異なるので、変換をするパーツが必要です。そのため、マイクロスイッチが乗る子基板を設計し、そこからGateron Low Profileキースイッチと同じ場所に足が生えるような形にしました。
Gateron Low Profileのキースイッチの足は0.8mm幅の結構細めな部品になっており、かつホットスワップソケットに差し込んでいるときに折れ曲がってもいけないのである程度の硬さが必要です。今回は詳細不明で年単位で放置されていたジャンク袋の中にあったトランジスタから足を切って使いました。どちらにせよキースイッチの足ではないので、着脱を繰り返していくとソケット側へのダメージが大きそうです。
3Dプリントの筐体設計
こちらも同様に当たり前の話ではあるのですが、マイクロスイッチに置き換えたことでいわゆる十字のステム(軸)がなくなるので既存のマウスボタン用のキーキャップは使えません。そもそもマイクロスイッチの高さが思ったよりある(6mm)ので、厚さ方向的にも結構ギリギリです。
そこで過去に作ったカスタムマウスボタンの設計を若干流用し、これ専用のボタンのハウジングを作りました。先ほどの子基板を爪で固定しつつ、3ボタンをまとめて1つの部品として設計しています。
ボタンの押下は一般的なマウス同様にたわみで押せるようになっています。別パーツにしていないのは嵌め合いなどの検証が面倒なのと、どうせ3Dプリントで出力するのであれば3Dプリントでしかできない構造にしてしまっても良いのではないかという判断です。
(下部にある爪で子基板をホールドする。筐体への接地も兼ねてる)
ちなみに寸法は過去の設計から流用したのもあります(マウスボタンの斜めの切り欠きなど)が、基本的に全部ノギス当てて実寸で作っています。もしPFUがマウスボタンの並びを1.25Uの間隔で配置していなかったらめちゃくちゃ難易度が高かったです。
組み立て
筐体は1ピースで出来上がるので、今回はJLCPCBのMJFとSLAで作ってみました。あとレジン系で冒頭の画像の透明バージョンも作りましたが、薄い部分が歪んでしまったのと手の触れるところにレジンは好まないのでボツです。あと組みなおしていたら割れました。
MJFはさすがの精度で、角も丸まらずにきっちり出ています。SLAはそこから一段劣る感じですが実用性としては十分なものになっています。色合い的にはSLAのほうがグレーよりの色なのでHHKB Studioの筐体となじんでこっちが好みです。写真はMJFです。
換装した感想は…?
正直なところ「微妙だなあ」となりました。某ThinkPadが薄いのでいけるやろと思っていたら今度はHHKB配列のCherry MXのストロークとの差が大きくなってしまって、超短ストロークなこれとのバランスが悪いと感じてしまっています。
あとマイクロスイッチにKailhのMute Swithという静穏タイプのスイッチを使っているせいか、押したフィードバックが弱すぎてこれもバランスの悪さに拍車がかかっている感じです。こっちに関しては筐体の設計でもっとたわむように調整することができると思いますが、薄くすると3Dプリントに失敗して怒られる可能性が高くなるので難しいところです。
意外と一般的なマイクロスイッチでカチカチ言わせるとこの不満は薄まりますが、これはこれでうるさいです。正直慣れとか好みの問題とかありそうな部分なので、もうちょっと長めにトライアルしてみようと思います。
おわり